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大切なことは「おいしさ」のもっと先にある。富士の小さなお店「洋菓子の家mimi」の話

いつも画面越しに見ているネットショップのむこうには、
想いのつまった"モノ"とそれを届ける""たちがいます。
このコーナーでは、知られざる商品開発ストーリーや
お店の裏側に迫る現場レポートをお届けします。
静岡県富士市で手づくりケーキを販売する「洋菓子の家mimi」さん。厳選素材を使ったケーキに創業時からこだわり、地域の人々に長く親しまれているお店です。今回はお店のなりたちや自慢の商品に込めた思い、ケーキ作りを通じた取り組みについてお話を伺いました。

静岡県富士市にやってきました。

東海道本線・富士駅から車で数分。今日のカラメル編集部がやってきたのは、のどかな町並みの中に建つ「洋菓子の家mimi」さんです。


さっそく店内でお話を伺います。

mimi さんはとっても広々としたお店ですね。

ありがとうございます!
ここは私の両親が 32 年前に開業した店で、ちょうど3年前に建て替えたばかりなんです。

お話を伺ったのは、販売・企画などを手がけている宮坂 望美さん。

1階は販売スペースになっていて、「mimiタウン」と名づけたこの2階はイートインスペース 兼 ワークショップ会場としてふだんお客さまに提供しています。

ここはご両親がたちあげたお店だったんですね!

そうなんです。今でこそ洋菓子専門店はたくさんありますが、地方ではそのころ「和菓子屋さんが洋菓子も少し置いている」というような和洋折衷のお店ばかりでした。
そんな中、あえて洋菓子だけのお店をたちあげるというのは両親にとってかなり挑戦的なことだったと思います。
 

多くの人に支えられた実家のケーキを、どうしても終わらせたくなかった

宮坂さんは娘として、いつかはお店を継ごうと決めていたんですか?

いえいえ、もう全っ然考えてませんでした!
やっぱり身内だと大変な部分ばかりが目についてしまうんです。たとえばケーキは作り置きができないので、クリスマスシーズンは徹夜になることもありましたし。

私には妹が2人いるのですが、姉妹それぞれ別の会社に就職しました。でも…。

でも?

「この店は将来どうなってしまうんだろう?」と考えてみたとき、私は両親のつくるお菓子が大好きだっていうことにふと気がついたんですよね。当時の私は他のお菓子屋さんで働いていたんですけど、うちよりおいしいって思えるお菓子はどこを探してもなくて。

ご自身のルーツということで、思い入れもひとしおですよね。

本当にそうだと思います。
あとね、これは妹の話ですが、他の会社でお勤めしていたころに偶然お客さまから差し入れをいただいたことがあったんですよ。

そのお客さまは「ここのケーキはすっごくおいしいから食べてみて」と、その場にいた社員みんなにケーキをたくさん買ってきてくださったんですって。

ひょっとして、それが。

そうです、mimi のケーキだったんですよ!

実家のケーキだったんだ! うれしいですね、それは。

ね、本当に! もちろんその方はケーキ屋の娘がいることなんて少しも知らずに差し入れしてくれたんですが、妹はそれが鳥肌が立つぐらいうれしかったみたいで。

こうやってファンの方々に支えられてきた両親のお菓子を自分たちが終わらせてしまうのは、いちファンとしてすごく寂しかったんですよね。そんなこともあって妹夫婦と一緒にこの店を継ぐことに決めました。

今こうしてお店を継いでみて、いかがですか。

毎日ケーキの焼けるいい香りがして、それを目で見て楽しめて…つくづくいい仕事に恵まれたと思います。気のおけない家族たちといつも一緒にいられるのも心強いですね。

よく周りの人からは「毎日ケーキに囲まれてたら嫌いになりませんか?」って聞かれるんですけど、私たち姉妹には不思議とそれがないんですよ。
心から好きと言えるものがすぐそばにあって、それに気づけたことが何よりも幸せです。
 

0.001g の差が、他では出せない感動につながる

そんな mimi さんの売れ筋はどのケーキですか?

一番人気は「半じゅくち~ず」という小さなチーズケーキです!

ふわふわとした軽いスフレの中に半熟食感を残しておりまして、お口の中でクリームみたいにとろけていくのが特徴です。

私たちも以前お取り寄せして食べました。
とろっとしているのに口の中でもったり残るような感覚がなくて、すごくおいしかった…。

わかっていただけて、すっごくうれしいです!
ご覧のとおり「半じゅくち~ず」は飛び抜けて個性的なフォルムじゃないので、他のチーズケーキとの違いがどうしても伝わりにくいんです。

正直「こういうケーキってどこにでもあるよね」とおっしゃるお客さまも中にはいらっしゃいます。でも実際に食べていただくとわかるんですが、他のお店のものとは中身が全然違うと思っていて。

どんなところに mimi さん流のこだわりがあるんでしょう?

とにかく 0.001g 単位で分量をきちっと計ることです。
これって当たり前のようですけれども、数ミリ、数グラムの差だけでも食感や風味はまったく変わってしまうんですよ。

目分量で計る大ざっぱなお菓子だったら、他の誰にでも作れますよね。
だけどその微妙なこだわりの差こそが感動につながると私たちは思うんです。プロとして常にドンピシャの味わいを究めたくて。
 

大切なものは「おいしさ」のもっと先にある

これからの mimi さんはどんなお店を目指していきたいですか。

そうですね…。
最近はもうおいしいケーキは割とどこでも買えるようになりましたよね。原材料の質も上がったからどこで買っても普通においしいし、マズいものがない。

父の代からこだわり続けるスイスチョコレート。創業当時、一般での入手は困難だった

「普通においしい」と「すごくおいしい」の差って、ごく一部の人には伝わるけれど、わからない人にとっては「マズいもの以外は全部おいしい」になっちゃうわけです。

たしかに…量販店のスイーツでもそこそこ満足できてしまう時代です。

そんな世の中で、これからの mimi が新しく何かをお届けするとしたら「おいしい」の先にあるものが大事になってくるだろうなと思っていて。

「おいしい」の先にあるもの、ですか。

はい。…もちろん、自信を持って最高のケーキをご用意するのが私たちの使命です。
でも、これからの時代はおいしさだけじゃなくて、ケーキを囲む家族の会話を広げ、笑顔の連鎖を生み出すことが、私たちにできる最大の社会貢献だと考えています。

そこで最近、私たちが開催したのが「夢ケーキ」というイベントです。

「夢ケーキ」! それってどんなイベントなんでしょう?

mimi のパティシエ全面協力のもと、親子で力を合わせてケーキ作りをしていただくイベントです。お子さんの好きなものや夢をかたちにしたケーキを、自由に作れるんですよ。

それはいい思い出になりそう…!

でもね、本当はケーキを作ること自体が目的ではないんです。
ケーキはあくまで一つのツールにすぎなくて、むしろこれを機に親子のコミュニケーションをさらに深めてください、というのが私たちが一番伝えたいメッセージですから。

なるほど。ケーキ作りを通じてお子さんの夢を再確認できるし、会話も弾みそうですね!

そのとおりです! 普段あまりやらない共同作業をすることで、逆にお子さんにとっても「お母さん、意外と上手だね」とか新しい発見があったりするんですよね。

ふだん一緒に過ごしているつもりでも、実はスマホやテレビに夢中できちんと会話ができていない…なんてことも多くなっている時代ですから。
私たちの店とケーキを、家族団らんの小さなきっかけにしてもらえればうれしいです!

この素敵な取り組み、もっと多くの人に知っていただきたいです。貴重なお話をありがとうございました!

今回ご紹介したショップ
洋菓子の家mimi
富士山麓の素材にこだわった手づくり洋菓子の専門店。

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